対象は日本全国。
福島の日常をクローズアップする言葉の職人

地域を動かす

スーパーローカルの視点で

福島民報の記者とは地域を元気にするために今を伝える役割を担っていると思っています。地域を良くしている方を紹介して、その方にもっと走ってもらうきっかけをつくる。その様子を取材して届けることを通して、地域を一緒に良くしていく。それが私たちの役割です。

先輩に言われて印象に残っているのは、「この仕事をしていると、名刺一つで地元のおじいちゃんから総理大臣まで会えるんだ」という言葉。思い起こすと本当に、地域の人と話すこともあれば、全国的に活躍している人、日本代表の選手の方に話を聞く機会もあり、この仕事をやっていてよかったと思っています。

一方で、テレビや全国紙が取り上げないようなところにも取材をお願いして行きます。あまり注目されない部分にあえて切り込んでいくのが、地方紙ならではの魅力です。地域の小さな話題を丁寧に拾い上げて伝えられることが、私たちの強みの一つ。だから「ローカル」ではなく「スーパーローカル」とよく言っています。

心を動かされた原点

言葉に

私が言葉を仕事にしようと思ったきっかけは、高校時代に友達からもらった手紙にあります。

当時、あまり勉強しても成績が上がらず、なかなか成績につながりませんでした。それでも放課後だけは残って勉強したりして。卒業する時に、一番仲良かった友達が手紙をくれました。「いつも頑張っているのを見てたよ」と。一生懸命に勉強したことは、あまり成果につながらなかったけれど、そうやって認めてもらえた人がいるというのが、やはり私にとってすごく力になりました。ちゃんと見てくれていた友達が、わざわざそうやって言葉にして残してくれた。その経験が、言葉をなりわいにしてみたいという、大きなきっかけでした。

大学時代、現在の上司が講師として授業に来ました。「地域のことは何でもネタになる」と話しながら、「必要なのはタイミングです。どんなネタでも、伝えるタイミングを間違うと届かない」と。地域のことを正しく伝えるということに、本当に真摯に向き合っているからこそ、そういったことを考えるのだろうと。その時に、改めて言葉で「届ける」という仕事にすごく魅力を感じたのです。

取材の日々

地域に根ざした

取材の発端はそれぞれです。「取材してほしい」と言われることもあれば、自分から「取材したいです」と言うこともあります。大体、話を聞きたいという方に会いに行って、その方に話を聞いて、記事を書く。テレビと違って写真も一緒に撮ります。記事にふさわしいシーンを撮って、取材を終えて会社に戻って記事を書く。視覚や味覚、嗅覚など、文字にのらない部分を言葉にするのは難しいですが、その伝え方を毎日考えています。

今は行政担当をしているので、議会の取材をしています。議会を傍聴して、議員さんの議論の中から、「これは記事にすべきだな」という話題を見つけて書きます。その場で判断するのが、いまだに難しいなと思っています。同じ取材をしていても、記者によって見方が違う。私は障がい分野について質問した部分を書いたけれど、他社はふるさと納税について書いていた、ということもあります。

正しく伝えるために大事にしているのは、公平な視点です。情報があふれている時代で、真偽不明な情報も多い。だから私たちは、例えば「こういうことをされて大変だ」という人がいたら、必ず相手側の意見も聞くようにしています。両者の意見を聞いた上で、可能であれば第三者の意見も聞く。フラットな立場を保ちながら、取材相手のことはちゃんと尊重しつつ、一歩引いた目線を忘れないということ。難しいですけれど。

感じるやりがい

記者として

事件・事故を担当していた時のことです。事件がなくても「今日、何かありますか」と警察の方に毎日会いに行っていました。飲酒運転の事故が多い時期があって、その担当の方がすごく熱心に話してくれました。「なぜそんなに」と聞いたら、その方のお父さんが飲酒運転の事故で亡くなっていたのです。

当事者の方の想いごと届けるために、記事にしました。すると「ありがとうございました」と言ってもらえて。「父のことを記事にしてもらえて、母も喜んでいます」と。そういうことを伝えられて、読んだ人がちょっとでも「気をつけよう」と思ってくれたら、それが一番嬉しいですね。

郡山には入社5年目ですが、5年くらいいると、何かの催しに行った時に「久しぶり」と言ってくれる人が増えてきました。それはすごく嬉しいです。知っている人が増えていくというのは。記者の仕事は、そこにいる地域の人と仲良くなっているかどうかが大事なのです。

発信のきっかけを作る

地域に

地方紙とはいえ、自分の書いた記事が全国メディア、テレビなどに取り上げられることもあります。本来、スポットの当たることのなかった地域の話題を記事にすることで、全国各地に広げることができる。地方紙の記者にはそのような役割があるのだなと思いました。

以前、百歳のおばあちゃんの化粧品販売員を取材したことがあります。その記事を読んだ福島県知事が、直接おばあちゃんを表彰する機会を設けてくれたんです。そして、その様子がテレビや全国紙を始め多くの媒体に取り上げられることになりました。その時に言われたのが、「あなたが取り上げなかったら、このおばあちゃんが知事に会うこともなかったんだよ」と。

県内にいながら県内のことを取り上げて、それが県外に伝わるようなきっかけを作る。そういう役割なのだなと思いました。今まで福島民報は本来なら福島に住む人しか読めなかったのですが、今はネットでの配信もあり、全国の人に読んでもらえます。それは新しいことですね。また、QRコードを載せて手話の動画をYouTubeで見られるようにしたり、紙面だけで完結しない新しい形も始めています。

福島を伝える

日本全国へ、

これからも、もちろん一番は福島の人に読んでもらいたい。そこから日本各地の人にも知ってもらえたら私は嬉しいです。

例えば、ヤフーニュースで配信されている記事を見て、「何の記事かと思ったら、うちの地元の記事じゃないか!」というような。離れた人が読んで、自分のふるさとのことを、思い出すきっかけにもなれたらと。ちょっとでもあったかい話題や、「福島にこんな人いるんだね」といったものを伝えていけたらいいなと思います。

この仕事は本当に、いろんな人の話が聞けます。初めて出会った人に深いところまで聞けるのは、この仕事でしかないと思っています。もちろん、関係性を築いたからこそ聞ける話もありますが、意外と「話を聞きたいんです」と言って行くと、みなさん快く話してくれます。その人の人生の財産みたいなところに触れられる。それがまた自分の中でも財産になっています。

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